
目次
【こんな人におすすめ】
- 辞めたいと悩んでる人。
- 優秀な人ほど辞めていき、組織にぶら下がる人だけが残ってしまう職場に悩んでいる人。
- メンタル不調や休職者が増え、「このままではまずい」と感じている人事・管理職。
- 「働きやすさ改革」を進めても、なぜか生産性もエンゲージメントも上がらないと感じている人。
- 上司と部下の板挟みになり、「人」の問題に疲れ果てている中間管理職。
- 自社の離職率・定着率を改善したい経営者、組織開発担当者。
- キャリアの中で「ぶら下がり」状態に陥ってしまっている自覚があり、そこから抜け出したいビジネスパーソン。
- マイナス感情が組織を蝕むメカニズムと、その止め方を体系的に学びたい人。
一つでも当てはまるなら、この本は「組織の病巣」を見える化し、どこから手をつければいいか教えてくれる実用的なガイドになります。
【はじめに】
『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』は、産業医でありMBAホルダーでもある上村紀夫さんが、「人が辞める・ぶら下がる・潰れる」組織の共通点と、その処方箋をまとめた一冊です。
著者は、離職・メンタルダウン・モチベーション低下といった職場の問題の根底には、「マイナス感情の蓄積」があると指摘します。経営学・医学・心理学の知見をベースに、「誰をどのようにケアするか」をマーケティング発想で設計し直すことの重要性を、わかりやすい図解と具体例で解き明かしていきます。
【要約】
本書のキーワードは「個人活性3要素」と「マイナス感情」、そして「ターゲティング戦略」です。著者は、人がいきいき働くために必要な要素として、心身コンディション・働きやすさ・働きがいの3つを挙げ、これらはピラミッド型の構造で積み上がっていると説明します。心身コンディションが土台であり、ここが崩れると、その上に乗る働きやすさ・働きがいもまとめて崩れてしまうのです。
まず、「心身コンディション」が整っていないと、どれだけやりがいのある仕事でも長くは続きません。長時間労働や人間関係ストレス、睡眠不足などでコンディションが揺らぐと、やがてメンタル不調や休職・離脱(働けなくなる離職)につながります。次に「働きやすさ」は、環境・制度・人間関係などの物理的・心理的な快適さ。これが低下すると、「ここではもう働きたくない」という消極的離職が増えます。
そして最上段の「働きがい」は、仕事の意味や成長実感、貢献感など。ここが損なわれると、辞めはしないがやる気を失った「ぶら下がり」状態、すなわち消極的定着が生まれると指摘します。著者は、組織が病んでいくプロセスを、「マイナス感情の蓄積」というレンズで捉えます。あきらめ、虚しさ、不安、怒りといった感情が少しずつ溜まり続けると、個人活性3要素のバランスが崩れ、辞める人・ぶら下がる人・潰れる人が多数発生する状態になるのです。
ここで重要なのは、「良い感情を増やす前に、悪い感情をこれ以上増やさない」「減らす」こと。にもかかわらず、多くの企業は表面的な「働きやすさ」だけを改善し、根本原因であるマイナス感情や心身コンディションを軽視してしまうと警鐘を鳴らしています。そこで著者が提案するのが、「ターゲティング戦略」です。
すべての社員を一様にケアするのではなく、3〜5年後に会社を支えるコア人材、今まさに負荷がかかりやすい新入社員・若手など、「ケアすべき人材」に優先順位をつけて集中的に施策を打てと主張します。これはマーケティングのターゲティング発想を、人材マネジメントに持ち込んだ考え方であり、限られた経営資源の中で最大限の効果を出すための現実的なアプローチでもあります。
具体策としては、個人活性3要素の状態を可視化するアンケートや面談の設計、メンタル不調の兆候を早期にキャッチする仕組み、マネージャー自身が燃え尽きないためのサポートなどが紹介されます。また、「ぶら下がり人材」や「地盤沈下型組織」といったキャッチーな概念を通じて、現場が直感的に自社の課題を把握できるよう工夫されています。全体として、本書は「病んだ組織」がどう生まれ、どう立て直せるのかを、データと事例を交えて整理した“組織の健康診断マニュアル”と言える内容になっています。
【感想】
この本が優れている点は、「やる気がない個人」ではなく、「マイナス感情を放置する組織の構造」に原因を見出しているところです。「個人活性3要素」というシンプルなフレームのおかげで、自分の職場やチームを冷静に診断しやすくなります。
また、「働きやすさ」だけを追い求めると、かえってぶら下がりを増やしてしまうという指摘は、日本企業の現状に非常にフィットしていると感じました。エンゲージメント施策を打つ前に、誰をどの順番でケアするかを決める「ターゲティング戦略」は、マネージャーのリソースが限られる現場にこそ効きそうです。
マネジメント側にいる人が読めば、「あの人が辞めたのは能力ではなく、構造の問題だったのかもしれない」と視点が変わりますし、現場メンバーが読めば、自分の心身コンディションや働きがいを守るためのヒントになります。組織に疲れている人ほど、早めに読んでおきたい1冊です。